第14回 浅草で拾ったメディアの紹介 [96/12/09]

【タイトル】「老いの道づれ」 沢村貞子 著

「泣く」というのはどういう感情なのだろう。
笑ったり、怒ったり、喜んだりする感情の行きつくところが「泣く」という感情なのだろうか。だから赤ん坊は備わった感情表現で気持ちを表すのだろう。
で、あたしは「鳴咽して」しまったのである。
先日のNTV「知ってるつもり」の扱った人物はは沢村貞子であった。沢村貞子と云へば「おていちゃん」で有名な脇役女優として知られており、あたしの高校の大先輩でもある。そんなで何気にみていたのだった。前半生は波乱があったものの、後半生から晩年は夫との静かな生活であった。幸せに暮らしている日々も終焉はくるもので、夫には先立たれてしまう。女優を辞め、かつての幸せな日々を綴るある日、ふと書き留めていた原稿を 整理していると夫からの妻に残した手紙が見つかる。あぁ、ここまで書いていて涙腺が緩んできてしまった。死の床で妻をいたわる夫の感情。言葉にはならない、グッとくる思いがひしひしと伝わる。今の己の境遇と照らし合わせて、いたわりの気持ちってのを大事にしたいな、などと心から思ったのであった。で、この紹介する本にその「手紙」が掲載されていて、その最初の一文を読むだけでもうウルウルしてしまう。あたしくらいの年齢のものにはまだ早すぎるテーマではあるが、基本的な「いたわり」のきもちってのはおなじだなぁ、としみじみしてしまうのであった。


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