第11回 浅草で拾ったメディアの紹介 [96/10/28]

【拾った場所】ROX3 3F ULTRA
【タイトル】「かせきさいだぁ」かせきさいだぁ(CDです)

「かせきさいだぁ」だ。
ちょっととんがった人たちのCD選評などでキーワードのようにちょこちょこ名前が出ていたので気にはなっていた。で、ラップなのである。
ラップと云えばスチャラダラパーの1st「スチャダラ大作戦」での、極彩色な子供加減にうんざりしてしまったのでちょっと受け付けなかったのであるが、この「かせきさいだぁ」のラップは素直にかっこいいと感じてしまった。要は「ジーパン・スニーカーとフォークロックの純文学」なのだ。
ラップ特有のマシンガンの如く発せられる歌詩のなかには「相合傘道行き」「ボクはどうも風邪をひいたらしいんだ」「夏なんです」と、伝説のバンド「はっぴいえんど」の歌詩の引用があったり、(中に「風をあつめて」というはっぴいえんどの曲のイントロを使用しており、元はっぴいえんどの鈴木茂がギター参加している)「やなぎやの主人」(つげ義春の漫画の引用)、「梶井基次郎の檸檬の中にでてくるような街の中」といったように、ほこりをかぶった古本屋の、壁の中にとじこめられそうな言葉の数々をラップの妙でいきいきと蠢かせているかんじにさせてくれている。これはかせきさいだぁ自身の声の せいかもしれないけれど(低めの、坦々とした声だ)、ロックを耳慣れる者にはとてもとっつきやすい気がした。
はっぴいえんどが日本語にロックをのせてうたっていた先駆だったように、かせきさいだぁは”詩(純文学)”をラップにのせて表現するってとこだろうか。
逆にまた、今のスチャダラをちょっと聞き直してみよか、なんて思ったりするあたしであった。


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