第8回 浅草で拾ったメディアの紹介 [96/09/08]

【拾った場所】ROX内新星堂
【タイトル】「Janis Joplin's Greatest Hits」Janis Joplin

ジャニス・ジョプリンはアメリカの60年代を象徴する「ロックシンガー」で、髪を振り乱しシャウトする姿がとてもかっこいいのだ。彼女の曲では「MoveOver」「CryBaby」等が有名で、このアルバムにも収録されているが、中でもあたしの好きな曲は「Summertime」である。
元の曲はガーシュウィンの歌劇「ポーギーとベス」にでてくるもので、スタン ダードナンバーとして有名であるが、ジャニス版では大胆なアレンジがされてい る。
元の歌詞の舞台はアメリカ南部の綿花農業地域、「じりじりと照りつける日差 し、日差しと影のコントラスト、泣いてる子ども、泣くのはおよしと子をいたわ る母はべっぴん、父は働きもの」という感じだが、ジャニス版は「ああまったく 暑いったらありゃしない、うるさいんだよぉこの子はもう、泣くんじゃないよ」 って雰囲気で、同じ歌詞でも聞こえ方がぜんぜん違う。はじめてこの曲を聞いた ときは(中学生のときだった)なんて声なんだ、というショックを覚えた。
今でこそ夏の歌といえばバカンス色の濃い歌というイメージが強いけれど、ヴィ ヴァルディの「四季」の夏の曲といいこの曲といい、夏の日差しの痛み、かげろ うの中の不安感がそのまま生活に反映してそうで、それはそれで凄みがあるよう な気がする。
ジャニスは結局麻薬中毒で死に至るのであるが、その死に様も、同時期に相次 いで逝ったドアーズのジムモリソンやジミ・ヘンドリックスと同様、時代が呼び、 時代が消し去ったという感がある。


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