第7回  浅草メディア紹介番外編〜上野の巻〜 [96/09/01]

 上野の駅前、しのばず口のガード下にそのスタンドカレーの店はある。
あたしが中学生のころだからすくなくともかれこれ15年位前からその店は同じたたずまいをみせている。ブラウンソースのきいたちょっと欧風の、スープっぽいルーで、スタンドカレーらしくない味が結構すきだった。上野に行った折はちょこちょこと食べに行く、そんな店だった。
 先日、2〜3ヶ月ぶりくらいに行ってみた。店はそのままあり、メニューの品揃えも同じだし、値段がちょっと安くなったなぁ(チキンカレー¥400→¥380)と思い、食べてみて驚いた。「味がちがうっ!」そう、カレールーが全く変わってしまったのである。あのブラウンのルーではなく、あたりさわりのないレトルトカレーのような味になってしまったのだ。店の人も、これまでは15年まえから変わらないおじさん(そういえばロス・プリモスの人に似ていた)達であったのが、すべて若い人に代わってしまっており、カレー屋の経営方針の変わったことを直にあらわしているようだ。厨房の人も全部代わっていたのでそうとうな事件があった様子だ。
 時の流れっていうのは如何ともしがたい。安くて、大量にさばけて、味なんかそんなにわかりゃしねぇよ、なんて思うのであれば商売は成り立ちそうであり、無駄が多すぎればリストラもありうる。けど、あたしのたまの楽しみをひとつ奪われた感じがして、なにか淋しい。
でもきっと、ロス・プリモスさん達はあのレシピをもって再びあたしの前に現れてくれるであろう。いつかきっと。その時はちっとくらい値段が高くてもいいから食べにゆきたい、などと思うのだ。


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