第1回 浅草で拾ったメディアの紹介 [96/04/07]

【拾った場所】リブロ浅草
【タイトル】「追憶・坂口安吾」坂口三千代著 筑摩書房

「無頼派」で戦後の文壇を席巻した作家・坂口安吾の半生を、「青鬼の褌を洗う女」である妻・三千代の眼から見たエッセイ集。坂口安吾という人は「堕落論」「桜の森の満開の下」が有名な、作家としてのバイタリティあふれる人というイメージが強いが、一方でヒロポン・アドルムなどの覚醒剤中毒になったり精神に狂気をきたしたりと、非常に弱い面をも持ち合わせている。この書では、著者がその彼の弱い面を必死にすくい取るかのごとく接するという、まるで闘病記のような描き方をしている。 また、後半では安吾の死後の三千代の生活(バー経営の日々、子供との対話など)を中心にさまざまな人との交流(紀伊國屋の田辺茂一氏との逸話は圧巻)をクールな眼差しで見つめている。そういえば全然関係ないが、無頼派の安吾と太宰治の配置関係は、イタリア映画監督のフェデリコ・フェリーニとルキノ・ヴィスコンティの配置関係に相似しているような気がする。


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